路上で青年が売る絵画を、
彼女は横目で気にしながら通り過ぎた。
仕事の帰り道はいつも、歩きながら
部屋に飾る素敵な絵を探している。
もちろん絵なんて画商から買ったっていいけれど。
道端で突然、自分の感性とシンクロするものに
出会うほうが、
面白いじゃないかと思う。
心を撃ち抜かれるようなものでなければ、
部屋に置きたくない。
彼女の部屋の壁は、引っ越してきて以来、
白く大きく空いたまま。
もちろん部屋の中だけではなくて、
髪もメイクも、身につけるものすべて、
自分らしいかどうかが大事だ。
今日もピンとくる絵は見つからないまま、
アパートメントの前まで来てしまう。
明日は友達が遊びに来るから、もういっそ、
みんなでカラフルな絵でも描いてしまおうか。